医学教育モデル・コア・カリキュラム(平成28年度版) 到達目標の解答例

著者:告訴・告発人

最終更新:2026年6月23日

出典:文科省webサイト

到達目標と解答
到達目標解答その知識により解決されるべき患者課題とその規模(need)
C-2 個体の構成と機能
C-2-4) 個体の発生
①配偶子の形成から出生に至る一連の経過と胚形成の全体像を説明できる。
②体節の形成と分化を説明できる。
③体幹と四肢の骨格と筋の形成過程を概説できる。
④消化・呼吸器系各器官の形成過程を概説できる。
⑤心血管系の形成過程を説明できる。
⑥泌尿生殖器系各器官の形成過程を概説できる。
⑦胚内体腔の形成過程を概説できる。
⑧鰓弓・鰓嚢の分化と頭・頸部と顔面・口腔の形成過程を概説できる。
⑨神経管の分化と脳、脊髄、視覚器、平衡聴覚器と自律神経系の形成過程を概説できる。
D-5-4) 疾患
D-5-4)-(1) 心不全
①心不全の定義と原因、病態生理(収縮不全、拡張不全)を説明できる。定義:心臓のポンプ機能の破綻、原因:心筋の変性や収縮弛緩異常、物理的阻害など、病態生理:心臓の収縮、拡張が阻害され、心拍出量が低下し、結果として身体局所の体液貯留、浮腫等が発生する。その結果、呼吸困難、倦怠感、運動耐容能の低下などの機能的障害を引き起こす。(心不全ガイドライン2025)「淡路の地域コホートであるKUNIUMI研究では,わが国における新規心不全入院者数は,2025年で21万人,2040年には25万人と予測している(図7)72).」(心不全ガイドライン2025 pp.27)
②左心不全と右心不全の徴候、病態、診断と治療を説明できる。左:左心不全は、左心収縮末期圧の上昇によって引き起こされる肺鬱血を原因として、呼吸困難、起坐呼吸、発作性夜間呼吸困難、胸水などの臨床症状を呈する。検査では、身体所見で心濁音界の拡大、心尖拍動の左方偏位、心尖部で3音や4音の聴取、肺野で断続性ラ音の聴取を見る。胸部X線、心エコーでも特徴的な所見を呈し、古くは心カテーテルで肺動脈楔入圧の上昇を確認した。右:右心不全は、右室拡張末期圧の上昇による体循環系の静脈系鬱血を原因として、消化系症状(食欲不振、悪心嘔吐、便秘)、下腿浮腫、体重増加、腹部膨満感、右季肋部痛、頸静脈怒張、腹水、心嚢液貯留、肝腫大等の臨床症状を呈する。検査では、身体所見として特徴的な臨床症状を取るほか、心エコーでIVC径拡大、呼吸性変動の減少などが特徴であり、古くは心カテーテルでCVP上昇を確認した。(イヤーノート2023)治療:心不全の治療はステージごとに異なり、ステージA(リスク群)、ステージB(発症・進行予防)、ステージC(有症状)、ステージD(治療抵抗性)の経過をたどる。ステージAには生活習慣管理(身体活動、運動、体重管理)、禁煙、節酒、高血圧治療、ACE阻害薬、SGLT2阻害薬、GLP-1r作動薬、フィネレノン等で管理する。ステージBにはACE阻害薬、ARB、β遮断薬、SGLT2阻害薬、スタチンで管理する。体液貯留に対してはループ利尿薬、バソプレシンV2受容体拮抗薬を使用する。ステージCでは再度発症予防のため全ての治療・管理を行う。ステージD は定義上全ての既知の治療が行われているが、症状が改善しない病態である。(心不全ガイドライン2025)
③急性心不全と慢性心不全の診断と薬物療法、非薬物療法(心臓リハビリテーションを含む)を説明できる。心不全の診断においては病歴、症状、身体所見、心電図・胸部X線等一般的な検査のほか、血液検査でナトリウム利尿ペプチド(BNP/NT-proBNP)と心エコーを用いる。身体所見では45度傾斜座位での頸動脈怒張、Kussmaul徴候、肝頸静脈逆流、聴診で3音、4音を聴取を見る。BNP/NT-proBNPは特異的な心原性逸脱タンパク質であり、診断的価値が高い数量指標である。心エコーで計測する左室駆出率は基本的な定量指標である。急性心不全の初期対応では、迅速に呼吸不全の評価と心原性ショックの評価を行うことが必要である。それらの対応ののち、ACSを除外したのち、鬱血・血行動態の評価を行い、基礎心疾患と特殊病態の診断・慢性期管理へ移行する。慢性心不全では基礎心疾患のと特殊病態の評価・管理を行い、急性増悪を予防する。ステージAでは身体活動・運動・体重管理、高血圧治療、左心駆出率に対するACE阻害薬、ARB、β遮断薬、HMG-CoA還元酵素阻害薬等である。ステージCやDでは強心薬の使用も検討する。また、非薬物療法として、埋め込み除細動器、カテーテルアブレーションも検討される。心臓リハビリテーションは急性期治療終了後すぐから始まり、早期離床を目指してベッドサイドで早期運動プログラムを開始する。回復期〜維持期症例では運動療法(モニタリング下での運動)を適応する。(心不全ガイドライン2025)
④心不全診療における多職種連携 (チーム医療)による疾病管理プログラムを概説できる。心不全に限らず、病者に対する全人的ケアには医学領域に留まらない多様な職能を動員して解決すべき課題が含まれる。したがって、医師、看護師等の伝統的医療チームの他に、カウンセラ、資源動員の調整役となる市役所職員等と折衝する活動も必要になる。
⑤高齢者における心不全の特徴を説明できる。高齢者における心不全は、その他の基礎疾患の存在、フレイル・サルコペニア等の基礎状態の悪さ、等の包括的管理を必要とする状態になりやすく、しばしば治療は困難をきたす。(心不全ガイドライン2025)
D-5-4)-(2) 虚血性心疾患
①安定労作性狭心症の病態、症候、診断、治療を説明できる。安定労作性狭心症は心筋虚血を原因する疾患のうち、病態が安定しており、労作時に限って自覚症状が出現するものである。運動等の労作によって酸素需要が上昇した場合、心臓のポンプ機能が負荷される。心臓における病変が軽度の場合には負荷時に限って胸痛、胸部不快感、息切れ等の機能的支障が生じる。安定労作性狭心症が疑われる場合には運動負荷心電図による診断が考慮されるが、運動負荷が禁忌である場合を注意深く除外する必要がある。治療は、基本は心筋への酸素供給を改善することによって症状をなくし、長期予後を改善することである。よって、薬物治療としてβ遮断薬、ACE阻害薬、ARA等を用いる他、高血圧、糖尿病、脂質異常症等リスク因子への介入によって管理する。(MCAガイドライン2018)
②冠攣縮性狭心症の病態、症候、診断、治療を説明できる。冠攣縮性狭心症とは、器質的閉塞によって冠動脈の血流が阻害断絶することによって生じる心筋梗塞に対し、冠動脈の機能的異常によって血流が一時的に断絶し、心筋が虚血状態になることで症状を生じる病態であり、(MCAガイドライン2018)
D-12-4) 疾患
D-12-4)-(8) ビタミン・微量元素の欠乏と過剰
①ビタミン・微量元素の欠乏症と過剰症を概説できる。ビタミンには脂溶性のものがA,D,E,Kと4類あり、水溶性のものがB,Cの2類である。水溶性ビタミンは速やかに代謝排泄されるため、過剰症を報告されたことがない。ビタミンBには、チアミン(B1)、リボフラビン(B2)、ナイアシン(B3)、ピリドキシン(B6)、ビオチン(B7)、葉酸(B9)、コバラミン(B12)、パントテン酸(B5)が属し、ビタミンCはアスコルビン酸である。チアミンは、糖質の代謝に関わる補酵素であり、その欠乏は脚気を引き起こす。カロリーの摂取をアルコールに依存するアルコール依存症患者でしばしば観察され、ウェルニッケ=コルサコフ症候群(錯乱、運動失調、眼球運動障害)として知られている。リボフラビンは、電子伝達系の酸化還元反応で補酵素として機能する。欠乏によって口角炎や脂漏性皮膚炎を引き起こす。ナイアシンは解糖系を構成するNAD+、NADP+の構成要素である。その欠乏はペラグラと呼ばれる疾患(表在性舌炎、皮膚炎、日焼け様皮膚病変、下痢、認知症)を引き起こす。ナイアシン欠乏症はクローン病に発展することがある。ピリドキシンは、糖質代謝、脂質代謝、アミノ酸の合成、異化、相互変換、及び100以上の反応(セロトニンとノルアドレナリン、スフィンゴミエリン、ヘム等の合成)において役割を担っている。ピリドキシンの欠乏症は軽度において易刺激性、神経過敏、抑うつ、重度において末梢神経障害、痙攣、昏睡をきたす。新生児てんかんの原因にもなる。ビオチンは脂質合成、糖新生、分岐鎖アミノ酸の異化反応に関わる酵素複合体で補酵素として働く。その欠乏によって抑うつ、幻覚、筋肉痛、皮膚炎を起こす。生卵の大量摂取で起こることがよく知られている。葉酸はDNA合成に関与する。葉酸欠乏は妊娠と授乳によって生じやすいことが著名である。妊娠中に血液量と赤血球数が増加し、葉酸必要量の需要が充足されなくなることで、神経管欠損症、低出生体重、早期産のリスクが高まる。コバラミンは、核酸合成、赤血球産生、葉酸の再生に関わり、肝臓に貯蔵される。その欠乏は悪性貧血(貧血、疲労感、便秘、体重減少、下痢、痺れ、刺痛、平衡覚消失、錯乱、気分障害、認知症)を引き起こす。アスコルビン酸は主に金属補因子を低原子価状態に止めることに働いている。アスコルビン酸の欠乏は壊血病(皮下出血、筋力低下、歯肉の腫脹と出血、創傷治癒力の低下と貧血)を引き起こす。白血球機能において重要であり、白血球中のアスコルビン酸濃度は外傷や感染症で急激に低下する。高齢者、喫煙者及び無糖練乳や沸騰された牛乳を与えられた乳幼児で欠乏リスクが高い。(べ・ド生化学6)
D-15 精神系
D-15-1) 診断と検査の基本
①患者-医師の良好な信頼関係に基づく精神科面接の基本を説明できる。 医療における面接には3つの機能が考えられている:1. 医師患者関係の構築,2.患者の健康問題の評価,3.患者の治療.1.意思患者関係は全ての治療的行為の基盤となるものである.両者の信頼を維持し,情報の流通を阻害せず,同盟を確立して「患者の疾患」という困難を医師-患者両者が共に乗り越えるべき共有の課題として設定することによって,治療の障害なき遂行を目指す,両者の関係を成立させるための主要な道具である.2.患者の健康問題は患者のみが知る事実によってのみ解明される因子を持つことが頻繁にある.生活習慣,食習慣,性習慣など,患者の健康に影響を及ぼす因子として,その他の社会交流においては隠されていることが通常であることは多数あり,しかし治療的に関与するためにはそれらを知る必要がある.そのため,医師は,それら事実を患者の尊厳を保った形で判明の状態におくため,面接を行う.また,面接における患者の受面接の態様が患者の健康を評価する情報となることもある.3.面接はそれ自体治療の道具となることがある.認知行動療法等精神療法に限らず,患者の行動変容を促し,健康を達成し維持する健康志向行動への傾向を高めることで患者の健康に寄与することは医師の行う治療行為の一部である.(メディカルインタビュー,精神科初回面接,土居1977,標準精神医学第9版)
②精神科診断分類法を説明できる。精神医学診断について,かつては臨床家の広範な裁量によって任されており,患者ごとに新たな診断名が発明される,もしくは全ての狂気は一つである(単一精神病論)とみなすなどのプラクティスが行われてきた.しかし,これは医師間のコミュニケーションに困難をもたらし,患者ケアのランダムネスを増大させ,知識の流通を妨げるなどの問題を発生させた.そのため,20世紀に精神疾患を体系的に記録・把握する分類的診断法が発展してきた.世界的に最も頻繁に参照されるのが米国精神医学会のDSMと世界保健機構のICDである.DSMは1980年の改訂(DSM-Ⅲ)により,診断の操作的基準を全面的に導入したことで著名である.(what-is-dsm)
③精神科医療の法と倫理に関する必須項目(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律、心神喪失者等医療観察法、インフォームド・コンセント)を説明できる。
④コンサルテーション・リエゾン精神医学を説明できる。
⑤心理学的検査法(質問紙法、Rorschach テスト、簡易精神症状評価尺度(Brief Psychiatric Rating Scale <BPRS>)、Hamilton うつ病評価尺度、Beck のうつ病自己評価尺度、状態特性不安検査(State-Trait Anxiety Inventory<STAI>)、Mini-Mental State Examination <MMSE>、改訂長谷川式簡易知能評価スケール等)の種類と概要を説明できる。
D-15-2) 症候
①不安・躁うつをきたす精神障害を列挙し、その鑑別診断を説明できる。
②意識障害、不眠、幻覚・妄想をきたす精神障害を列挙し、その鑑別診断を説明できる。
③ストレスなどの心理社会的要因が症候(息苦しさ、心窩部痛、腹痛、頭痛、疲労、痒み、慢性疼痛等)に密接に関与している代表的な疾患を列挙し、その鑑別診断を説明できる。
D-15-3) 疾患・障害
①症状精神病の概念と診断を概説できる。
②認知症の診断と治療を説明できる。
③薬物使用に関連する精神障害やアルコール、ギャンブル等への依存症の病態と症候を説明できる。
④統合失調症の症候と診断、救急治療を説明できる。
⑤うつ病の症候と診断を説明できる。
⑥双極性障害(躁うつ病)の症候と診断を説明できる。
⑦不安障害群と心的外傷及びストレス因関連障害群の症候と診断を説明できる。
⑧身体症状症及び関連症群、食行動障害及び摂食障害群の症候と診断を説明できる。
⑨解離性障害群の症候、診断と治療を説明できる。
⑩パーソナリティ障害群を概説できる。
⑪知的能力障害群と自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder <ASD>)を概説できる。
⑫注意欠如・多動障害(attention deficit / hyperactivity disorder <ADHD>)と運動障害群を概説できる。
参考文献
略記号文献名
ベ・ド生化学6ベインズ・ドミニチェフ生化学原書6版
心不全ガイドライン20252025年改訂版 心不全診療ガイドライン
MCAガイドライン2018慢性冠動脈疾患診断ガイドライン(2018年改訂版)
イヤーノート2023イヤーノート 2023 内科・外科編 電子版
メディカルインタビューメディカルインタビュー 三つの機能モデルによるアプローチ 第2版
土居1977土居健郎『新訂 方法としての面接 臨床家のために』,医学書院,1977.
標準精神医学第9版監修:尾崎紀夫,ミ村將,編集:水野雅文,村井俊哉,明智龍雄『標準精神医学第9版』,医学書院,2024.
what-is-dsmAmerican Psychiatric Association "What is the DSM?", https://www.psychiatry.org/patients-families/what-is-the-dsm, accessed on 06/23/2026.